「小沼丹」ユーモアあふれる大人な魅力を放つ作家

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小沼丹さんについて

こんにちは!じゅんです。

みなさんは「小沼丹」さんという作家をご存じでしょうか?

早稲田大学英文科教授でありながら、作家としてとても評価された方です。

現在は講談社文芸文庫から小沼さんの歴代の本が出版されていて、私は「村のエトランジェ」と「木菟燈籠」を読ませていただきました。

その際、小沼さんの現実的でありながらどこか大人なユーモアが含まれる文章にとても感銘を受け、このような文章を書けるようになりたいと思ったものです。

今回はそんな小沼丹さんの魅力を、このブログを読んでくださっている方に伝えたいと思います。

そういえば、以前もブログに小沼さんのことを書いたことがあったかしらん?

村のエトランジェ

「村のエトランジェ」は小沼丹さんの最初の作品集で、収録されているのは以下の8つのお話しです。

・「紅い花」

・「汽船」

・「バルセロナの書盗」

・「白い機影」

・「登仙譚」

・「白孔雀のいるホテル」

・「ニコデモ」

・「村のエトランジェ」

この中で私が一番印象に残っているのが「白い機影」です。

主人公はお店の中で隣に座っていた画家の「タキ」という男と空襲の話をし、その後交流するようになります。

主人公はタキに案内され彼の画廊に入りますが、そこでタキの細君ではないある女性と出会うのです。

その女性は以前タキとお付き合いしていましたが、今は別の男性と結婚していました。

主人公はなんのとなく察しがつき、その女性がいる時はタキの画廊には行かないようにしますが、しばらくすると女性の方から主人公に会いに来るようになります。

主人公はタキに誤解されたくないため、迷惑だと思いながらも最後にはそれだけではない何かを感じてしまいます。

この小説はある女性に振り回される主人公とタキを描いた作品ですが、ところどころに散らばめられる、良い意味で大人な空気感がこの小説の魅力となっているのだと思います。

女性が主人公のもとへ行っていることを知ったタキが、主人公となんともいえない会話をする場面があります。

p.103

僕は知っていますよ。

そう云うと、タキは妙に落ち着き払った表情で、僕を見詰めた。何かを探り出すかのように。すると、ありの儘を説明しようと思っていた僕の気持ちが、妙なことに消滅した。知っているのなら問題はない。僕は笑った。

今后はなるべく、お手柔らかに願います。

タキも苦笑した。

これをどう捉えるかは人によって異なると思いますが、私はタキと主人公の大人な信頼関係とユーモアの上で成り立っているような会話だなと思いました。

まとめ

全編に散りばめらている独特の文章表現が小沼さんの真骨頂だと私は思います。

ここまで個性が出ているのに、文章に嫌味がなく水が流れるように頭に入ってくるのは、小沼さんの作品以外にはいないでしょう。

とても読みやすくて誰でもすぐ読めるといった作家ではないかもしれませんが、読書好きな人にはぜひ読んでいただきたい作家です。

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