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偶然見つけた名作ゲームの漫画
漫画版「Fate/stay night Heaven’s Feel」を入手したのは数か月前だった。
その時購入したのは1巻から3巻まで。
Fateは原作のゲームをプレイしていたが、漫画版はそれでも面白いと思える素晴らしい出来だった。
このFate/stay nightという作品、知らない方もいるかと思われるので軽い紹介をしておく。
FateはTYPE-MOON原作のPCゲームで、聖杯戦争という英霊どうしの戦いがメインの物語。
登場する英霊は、それぞれマスターと呼ばれる人間に使役され、令呪という鎖で縛られている。
聖杯戦争の名の通り、勝利者にはどんな願い事も叶える「聖杯」が与えられるため、マスターはもちろん、英霊も自身の願いのために聖杯戦争に参加するのだ。
とまぁ、このようなゲームなのだが、実はこのゲーム、伝説的なヒットを記録している。
ライターの奈須きのこ先生の素晴らしいシナリオと、作画の武内崇さんの美しいイラストがユーザーの心に響いたのだ。
Fate stay night Heaven’s Feelは、このゲームの最終章にあたるルート。
漫画版FateHF~変わることの難しさ~
漫画版FateHFは「タスクオーナ」先生という漫画家が執筆されている。
私は初めて読む漫画家さんであったが、とても原作を大事にしているイラストと、シナリオ展開に読んでいてとても嬉しくなった。
ヒロインである間桐桜の、儚げでどこか寂しさの感じる描写が、とても自然に漫画で描かれているのだ。
そして何より、タスクオーナ先生の描く桜は死ぬほど可愛い。
これだけでも、漫画版FateHFを買う価値がある。
タスクオーナ先生は、今作以外にも、「氷菓」などのコミカライズで高い評価を受けている作家だ。
FateHFにおける桜の諦めと強い想い
人間の闇の側面というのは、普段は滅多に表面に出るものではない。
しかし、知らず知らずの内にそれが自分を形作る顔になっているもの。
どんなに強く生きようと思っていても、何度もそれをへし折られれば人間は諦めてしまうのが世の常だ。
今作のヒロイン「間桐桜」はどこかそんな諦めが顔に出ているキャラクターである。
Fateシリーズの中では、そういった意味で一番共感出来るキャラクターだったかもしれない。
そんな桜は、毎日主人公の「衛宮士郎」の家に通い料理を作りに行く。
傍から見たら、なんともうらやましくなるような可愛らしい後輩で、士郎のことを「先輩」と呼び、とても慕っている。
余談だが、私が高校時代の頃は、家に来てくれる後輩はおろか、友達すらいなかった。
私は学校の休憩時間に本(ラノベ)を読むということを平気で行なっていたような人間だから、しょうがないのかもしれないが。
本当にどうでもいい話だ。
この漫画を読んでいて特に驚くのは、桜が士郎を想う気持ちである。
いっかいの高校生が抱く感情とは思えないほど強い愛、言い方を変えると依存を感じるのである。
それは桜が今まで間桐の家で受けてきた仕打ちが関係してくるのだが、想像を絶する運命にありながら、それでも主人公を信じている点がすごい。
士郎はオカン属性をもつ正義の味方
桜が想いを寄せる主人公の士郎はどういう人物なのかというと、端的にいえば正義の味方。
桜が士郎を好きになるのも、少しだけ分かってしまうほどのいい奴。
生徒会長の友人の頼みを進んで引き受け、桜の兄である慎二に押し付けられた雑用をたんたんとこなす、まさにオカンのような存在である。
そんなオカンな士郎は、家でも最大級のオカン力を発揮している。
士郎の姉替わりであるタイガーこと藤姉の朝食と夜食を毎日作り家事選択を全てこなすのだ。
とても高校生男子とは思えない。
まさにオカン。
まぁ、つまり、困っている人がいると絶対に助けずにはいられないのが衛宮士郎なのである。
これは桜も好きになるわ・・・
いや、桜だからこそ士郎に強い愛情を向けているのかもしれない。
絶望の中暮らしている桜の、一筋の光が衛宮士郎なのである。
士郎が”普通”じゃない理由は絶望と救いを味わったから
しかし、普通の人間が士郎のような正義の味方になるかということを考えると・・・「そうはならないよなぁ」と思うのが正直なところ。
実際、士郎がそうなったのにはちゃんと理由がある。
それは、一度地獄を見て、その地獄のふちで衛宮切嗣に助けられたことである。
切嗣が士郎を助けるまでにも長い道のりがあるのだが、士郎はそのことを知らないので、その助けられた記憶だけが鮮明に焼き付いている。
そして、そんな切嗣に恩返しするかのように、士郎は正義の味方への道を走り出す。
私はFateのファンであると同時に士郎のファンでもあるのだが、とてもじゃないがこうはなれないなと思う。
人にいいように使われても怒らず、縁を切らず、親しく接するなんて、私の場合もって一日だろう。
なんてことを考えている私には、本当に士郎はまぶしい存在だ。
FateHFの士郎のように変わることは99%難しいが0%じゃない
物語が動き出すのは、士郎が慎二に頼まれた弓道場の掃除を遅い時間まで行い帰宅しようとしたところ、校庭で得体の知れない戦いに鉢合わせるところからだ。
人間とは思えない常軌を逸した動きを見ている内に、自分の身に危険を感じて逃げ出すが、すぐに見つかってしまう。
この得体の知れない二人というのが、みなさんの想像通り英霊で、つまり英霊どうしの戦いが校庭で行われていたのだ。
物語が進んでいくうちに、士郎自身もマスターとなり英霊と出会うことになる。
それがセイバーである。
英霊の中で最強と言われるセイバークラスを呼び出したのは、魔術師としては三流以下の士郎だった。
実は原作の3つあるルートの内の1つはこのセイバールートなのである。
それぐらい重要な立ち位置にキャラクターで、そのセイバーが今回のHFルートだとどうなるのかというこがこの作品の一つの見どころだ。
士郎は自分が過去に起きた地獄を繰り返さないために聖杯戦争に参加するが、実はこのHFルートでは他のルートにはない決定的な変化が士郎に訪れる。
もちろんそれはここでは言わないので、原作をプレイしたり漫画を読んでほしいのだが、自分の信念と大切なものを天秤にかけることの苦しさを存分に描き切っている。
変化というものは、簡単なようでいてとても難しいものだ。
私のように、すれてしまった人間には誰かに言われて変わるなんてことは難しい。
もちろん、HFでの士郎の悩みはそんなちんけで矮小な悩みではないが、士郎が最後に出した決断はすごく私の中でしっくりきたし、すごく嬉しかった。
それは私にとっては絶対に不可能な変化であり理想であったからだ。
私も心の中では誰も悲しまない、笑っていられる世界になればいいと思っている。
そこに絶望し私のように屈折した人間になるか、士郎のように信念を持つかで人間の価値は変わってくるのかもしれない。
士郎はこのHFで確実に変化が訪れるが、それは悪いものではなくとても尊いものである。
そんな変化を私もしたいと思う限りだ。
映画版FateHFは絶望に立ち向かう意志
実はこのFate stay night Heaven’s Feelは映画化されている。
今年の冬に映画第二章が放映され、大盛況だったのだ。
制作はufotable(テレブアニメFate Zero、 Fate UBWを担当した)で、その素晴らしい技術を存分に活かし、今までのアニメ映画にはないほど美麗な映画となった。
特に第二章では、士郎の決意が明確になる。
とても苦しく身がよじれるような選択をした士郎は、本当に理想的でこんな人間になれたらなと心から思ったものである。
そして桜の心のヒビが取り返しのつかないところまできてしまうのがこの第二章でもある。
桜にも大きな変化が訪れるが、ここまでのことを経験し狂わないほうがおかしいのであって、悲しい物語だがどこか現実的な側面も持っているようなそんな気がした。
ぷつん、と何かが切れる瞬間というものは、人間が生きていれば何度かは経験することになるだろう。
盲信していたことが信じられなくなったり、自分のキャパを超える出来事が身に降りかかったて来た時などである。
間桐桜の場合、長年蓄積していった心と体の”傷”が間桐臓硯によって強制的に浮かび上がらせられ、貯めてきた力の暴走が始まる。
Fateシリーズの中で、一番見ていて辛くなってくるシーンだ。
そこまでが第二章で、来年の第三章で映画が完結する予定。
(追記)2020/01/05
2020年、明けましておめでとうございます。
この記事を書いて数ヶ月経ちましたが、映画第三章の公開日程が決まりましたね。
2020年3月28日公開です。
タイトルは「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song」。
このタイトルをどう捉えるか、どのような結末になるのか。
いやぁ、何か起こりそうな気配が私にはするんですが・・・それは見てのお楽しみ。
まだ、3ヶ月ありますが本当に楽しみでしょうがないです。
さいごに~好きと憧れは同一か否か~
私が現在読了しているのは第3巻までである。
少し調べてみると現在は7巻まで進んでいるから、映画の方が先に進んでいるようだ。
しかし、漫画としてのクオリティがとても高いから、いずれ3巻以降も買いに行こうと思っている。
既に原作がある作品の漫画化というのは、正直な所アニメ観ればよくない?と思ってしまうタイプだったのだが、この漫画でその概念が覆された。
漫画って素晴らしい。
余談だが、こうやって思った事を書く際にも手元に漫画があるので読み返しやすいからやっぱり紙の本が良い。
そういった意味でデジタル化が進んでいる中で、紙の本の良さを感じたのだった。
おっと、話が大きくそれてしまった。
私は個人的に、Fateの2つ目のルートのヒロインである「遠坂凛」が好きなのであるが、シナリオという意味ではHFを押したい。
好きなのは遠坂凛だが、共感出来るのは間桐桜だ。
遠坂凛ほど優秀を体現した存在はいないし、とても憧れる。
しかし、それは自分が完全にそうはなれないと認めてしまっているからだと思う。
人は自分がなれそうなものに憧れることはないから。
人は自分にないものを持っている人を好きになる。
自分もそうなのでなんともいえないが、それってどうなんだろう・・・と思うこともある。
その好きな部分がなくなったらその人を嫌いになるのだろうか?
好きって何だろうか。
え?考え方が幼い?中二病?けっこう!私は一生中二病で生きていきます!
Fateを読むことによって、そんな関係のないことまで考えてしまう私はちょっとどうかしてるのかもしれない。
さてさて、そろそろとりとめがなくなってきたので終わりにしようか。
とにかくこの漫画版Fate HFはお勧めだし、読んで絶対に後悔しない素晴らしい作品になっているから、初見の方はもちろん、既に原作をプレイ済みという方もぜひ読んでほしい。
ps.
この駄文をここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!
最後まで読み通してもらえるほど嬉しいものはないです。
ブログやツイッターに感想をコメントしてもらえたら、きっと喜びすぎて鼻水出ます。
・・・・・・
それでは、またどこかの記事でお会いしましょう!