はじめに
「図書館の魔女」を手に取ったのはおそらく一年ほどまえで、その時は半分ほど読んだところで、ストップしていた。
しかし、「図書館」というワードで、私の好きな「本」に関係する物語なのは間違いないわけであるから、もう一度挑戦してみようと思ったのが数日前。
そんな訳で一年越しに読了することが出来たので、少しばかり本の説明+感想を書いていきたいと思う。
まだ購入していない方も、既に手に取っている方も、「読んでみようかな」と思うきっかけになれれば幸いである。
(図書館の魔女 第一巻)
じんわり響いてくる小説
「図書館の魔女」は、著者は高田大介さんで、講談社から出版されている。
魔女というワードから、いかにも壮大な物語を期待してしまうかもしれないが、この一巻だけを読んでみると、戦闘シーンもなく、あっさりした感じ。
しかし、図書館という空間はとても複雑で、また主人公をとりまく人間関係や、それぞれの所作の”表現”の多用さは、とても優雅で惚れ惚れするものがある。
余談だが、私は昔から図書館というものに昔から非常に興味があった。
特に借りていくわけではないのに、図書館を訪れ、良い本はないかと眺めていることがあり、司書という仕事に興味を抱いたこともあった。
そういった意味で、この本は私にとって内容的にドンピシャであったため、最後まで読むことが出来た。
誤解を恐れずに言うならば、誰にでも読みやすい小説ではない。
読者にはある一定の想像力と本が好きであることが要求されるような気がした。
しかし、こういった小説が現代にあるというのはすごく嬉しく思うし、これからもぜひ読んでいきたいと思ったものである。
あらすじ
主人公のキリヒトは、田舎の小さな村出身の少年。
ある日、王宮付きの役人がキリヒトを訪ねにきて、図書館の塔に行くように命じられる。
突然のことに驚くキリヒトだが、実はそう言われるだけの力があった。
それは、恐ろしく良い耳と、観察眼である。
その能力を活かし、図書館では主であるマツリカという少女(図書館の魔女)に仕えることになり、ハルカゼやイラムとともに仕事をしていくことになる。
文学的要素の強い現代ファンタジー
この小説は、読んでいくごとに、暗い靄のようなものが明けてくるような感覚になる。
つまり、最初はよくわからなかった登場人物も、読んでいくごとに、その行動様式やキャラクターなどが見えてくる。
主人公の少年と、ヒロインの少女、周りの女性達など、現代的な小説の典型かと思っていが、読んでみると、予想に反して硬派な小説であった。
言い方を変えれば文学的だったのである。
タイトルから、派手な戦闘シーンなどを期待するかもしれないが、そういったシーンはなく、物語はたんたんと進んでいく。
ところどころ、難しい部分があり、一回読んだだけでは理解しきれないところが、こういった小説の中では一千をかしているように思える。
明らかに何かが違うと感じ、著者紹介を読んでみると、なんと文学科の博士課程を卒業しているではないか、「やっぱりなぁ」とおもったものである。
文学好きに好かれる、そんなツボを押さえているようなそんな小説だった。
なんて私はそれっぽいことを書いてしまっているが、読後は結局、キリヒトとマツリカは今後恋愛関係に発展するのか?とか、ハルカゼやイラムと三角関係になっていったらおもしろい・・・なんて考えてしまったりもしたが、まぁそれも小説の楽しみだろう。
そんな先がとても気になるのがこの第一巻である。
この図書館の魔女シリーズは、現在では全四巻で、加えて続編?の鳥の伝言まで発売されている人気シリーズであるので、まだまだ楽しむことが出来るということにとても嬉しくも感じる。
派手な冒険譚が読みたい好きという人も、好き嫌いせず、ぜひこのじんわりとした時間に身を任せ本書を楽しんでほしいなと思う。